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仙台高等裁判所 平成3年(ラ)95号 決定

抗告人(原告) 株式会社 ヤナセ東北

右代表者代表取締役 梁瀬次郎

右訴訟代理人弁護士 松浦正明

主文

原決定を取り消す。

理由

一  抗告の趣旨及び理由は別紙「抗告状」及び「抗告状の訂正申立」の各写しのとおりである。

二  記録によれば、抗告人(原告)は、頭書肩書地に営業所をもつ会社であるが、平成三年九月六日仙台地方裁判所に対し、宮城県宮城郡七ケ浜町《番地省略》我妻伸二、仙台市青葉区《番地省略》川崎俊哉、福島県須賀川市《番地省略》福沢ビル二〇二椎名毅及び同県郡山市《番地省略》株式会社パルテノンを被告として、各被告から各別に自動車の修理の依頼を受けてなしたその修理代金を併合請求(訴訟物価額一三九万八二三四円)しているものであるところ、原審は、被告らに本件訴状送達もせず、第一回口頭弁論期日指定もなさないまま、併合要件が欠缺するとして、分離のうえ、被告我妻に対する請求を除くその他の各請求を各被告の普通裁判籍所在地を管轄する簡易裁判所に移送を命じたこと及び抗告人(原告)の請求にかかる右各債権はいずれも商事債務として、その履行地は抗告人(原告)の営業所所在地の仙台市であること(本件は、被告らに対する訴状の送達もなく、また、第一回口頭弁論期日の指定もないままになした移送決定であるため、各被告が履行地につき争うものかどうか、全く資料がない。)が認められるので、訴訟物の価額によって、各被告の普通裁判籍所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に土地管轄のあるほか、その履行地を管轄する仙台地方裁判所又は仙台簡易裁判所にも管轄権があるといわなければならない。

三  右によると、抗告人(原告)の被告らに対する各請求にかかる債権は、民事訴訟法五九条後段にいう「訴ノ目的タル権利又ハ義務カ同種ニシテ事実上及法律上同種ノ原因ニ基ク」ものに該当し、抗告人(原告)のこれら請求は、同条による共同訴訟の要件を充足していると認めることができる。

四  そして、右併合請求の場合、訴訟物の価額は、民事訴訟法二三条により、各請求の合算額である一三九万八二三四円と算定すべきであり、これは、地方裁判所の事物管轄に属するので、本件は、併合裁判籍として、仙台地方裁判所をもって第一審管轄裁判所と認めるを相当とする。

五  よって、抗告人(原告)の本訴請求のうち、被告我妻を除くその余の各被告に対する訴えを分離して管轄違いとして移送を命じた原決定は失当であるから、これを取り消すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 三井喜彦 裁判官 齋藤清實 小野貞夫)

〈以下省略〉

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